師を捨てよ、街へ出よう

元オウム真理教幹部 加納秀一はLSDのイニシエーション、温熱修行、毒ガスの人体実験をくぐりぬ け、有印私文書偽造で逮捕、脱会。
多くの元信者が未だ生き甲斐を見つけられず戸惑う中、その体験を詩作から音楽へと結実させる。
宗教は人を救わないが、創作は人を自立させるのだ。

AーAKIRA Kー加納秀一 

A-空中浮遊って、まるっきりインチキとは思えないんですが?
K-いわゆるジャンプで、浮遊ではありませんが、半分が筋肉飛び、半分がヨーガの呼吸法です。麻原の撮影には立ち会っていませんが、特撮とかは使ってないと思います。
A-ここに<麻原彰晃のズバリ!浮遊>という本がありますが、いきなり見開きで加納さんの空中浮遊がのっています。麻原の苦しい表情とは対照的に余裕の笑顔で飛んでますね。(笑い)
K-これは隣の人といっしょに飛んでるジョークみたいな写真で、初め50枚くらい撮影したらカメラマンのミスで1枚も写 ってなくて、もう50枚分ほど飛ばされました。(笑い)一番高いジャンプの瞬間を撮影するわけなんで、浮遊と言うのは嘘ですね。
A-インドで3日間くらいヨーガ教室通ったんですが、その先生も「1時間浮遊した」とか言ってました。しつこく頼んだけど見せてくれませんでしたね。(笑い)加納さんはオウムに入る以前からヨーガの修行を積まれてますが、具体的にはどのようにするんですか?
K-まず蓮華座を組んで気が下から逃げないようにせき止めます。そしてムドラーという息を限界まで止める呼吸法で、バンダします。それは、喉とおなかと肛門を引き締め気を圧縮する方法です。そうすると中央の気道を圧縮されたクンダリーニの性エネルギーが上昇して行くんです。
A-性エネルギー?たまってる人ほど飛べるんですか?
K-そうですね。禁欲は絶対条件です。
A-加納さんもオウム時代は禁欲で通したんですか?
K-よくからかわれるんですが、今でも通してます。生まれてから一回もセックスしてないんです。
A-ええっ!(AKIRA感動と同時に、とても恥じ入る)
K-この間も女の子と2人だけで2日間過ごしましたが、自分の禁欲よりも、相手の気持ちが分かってるだけに気疲れしますね。
A-美貌と知性と行動力のかたまりのような加納さんが禁欲とは、罪ですよ。(笑い)いや、やっぱり禁欲は続けて下さい!こんな怪物が性に目覚めてしまったら、日本はサリン事件以上のパニックになりますから。(笑い)
A-LSDのイニシエーションはどうでした?
K-あれは94年の後半頃かな、信者の間ですごいイニシエーションが行われるらしいって噂が流れて、10日間で1500人ぐらいの人が参加しました。出家、在家信者だけでなく、外部の人も無料で受けられたんです。
麻原の気まぐれによって色々なイニシエーションが行われたのですが、あめ玉 だったり、ジュースやラーメンとか・・・
A-えっ!<LSDラーメン>ですか?
K-ちがいますよ。(笑い)
LSDはワイングラスに入ったちょっと甘い液体で、教祖が少し口に含んでもどしたものを飲むんです。
A-いくら口に含むだけとはいえ、1日に200人分もやったら本人も飛んじゃうんじゃないですか?
K-大丈夫でしょう。
A-空中浮遊は得意だから?(笑い)
K-それからみんなおむつをつけられて、2畳ほどのステンレスでおおわれた個室に閉じこめられるんです。
A-それってバローズが入ってたライヒのオルゴンボックスかな?目に見えない宇宙エネルギーを集めるってやつ。
K-いや、むしろ外部から入ってくるものを遮断するって目的ですね。
A-じゃアイソレーションタンクに近いのかな。トリップの入口って初恋のような胸騒ぎを感じませんでした?
K-うーん、なかなか効いてこないんで、眉間に意識を集中したんですよ。そしたら呼吸が止まるような感じで喜びが突き上げてきて、自分が巨大化していって地球を見おろしているんです。楽しかったですね。
A-バッドトリップには入らなかったんですか?
K-ええ、時間の感覚はわからなかったのですが、後半、過去のイメージが次々と現れて名古屋支部にいたときのうらさびしい路地裏だとか、選挙のときのむなしい情景だとか、気がついたら最初に組んだ座禅のまんま12時間がたってました。
A-それはすごい。ふつうなんだかわかんないまんまLSDを飲まされたら、パニックになりますよ。
K-まわりの部屋はパニックでしたよ。
叫ぶヤツやら、血みどろで壁を叩くヤツやら、パンツ脱いでマスターベーションはじめたり、女の子も裸になって暴れ出したり。そうそう「スペシューム光線!」って叫んでるヤツもいたな。(笑い)
A-オレの知り合いも2人死んでます。池に飛び込んだり、窓から飛び降りて。
LSDを初めてやるときは、グルというか、信頼できる経験者をつけてやらないと危ないんですよ。
K-監視人みたいのが何人かに一人ついていたんですが、耳元でささやくわけですよ。「入信しろ」とか「修行しろ」とか。(笑い)
A-それってズルイー!ドラッグ後進国の純粋さを利用して、あのオッさんはLSDを自分の手柄に変えちゃって。
LSDは最初、ホフマンって博士が30年代の後半かな、偶然見つけて、スイスの製薬会社が分娩を促す子宮収縮剤として売り出したんですよ。
それを60年代の頭あたりで、あのティモシーリアリーが独り占め状態で「TURN ON! TUNE IN! DROP OUT!」と叫んでヒッピーの教祖になるんだけど、ハーヴァードで共同研究していたリチャードアルパートは、どうしてもこの薬がもっている本質を知りたくてインドに渡るんですよ。それでLSDのビンを抱えてインド中を放浪してやっとコイツだ!みたいなグルに出会うんです。
で、こいつに1錠飲ませようとしたら、ビンをひったくって全部の飲んじゃったらしいんですよ。
昔聞いた話なんでオレの記憶もあてになんないんだけど、百マイクログラムもあれば十分飛べるのに、百万マイクログラムを一気飲みしちゃったらしいですよ、そのグルは。
これって発狂して死ぬ致死量には十分なんだけど、なんせ学者だから、ヤバイと思いつつも、救急車も呼ばずに観察してるわけです。
するとグルはときどきこっちを見ながら、ニヤッとウィンクするだけで、最終的になんも起こらないんです。
ここでアルパートは気づくんですよ。LSDはギターやマイクのアンプ、つまり拡大装置であって、潜在意識が常に開かれた人間にとっては、何 も特別なものではないと。
K-2ヶ月間眠らずに修行したことがあるんですが、もちろんドラッグなどを使わずに。
そのとき見た光の体験は忘れられませんね。
とりあえず時間と場所が与えられたので、自分でも徹底的にやろうと思って、眠りそうになると3日間立って瞑想したり、すると潜在意識が開いてくると言うか、寝ている自分をもう一人の自分が見ているんです。
5日間続けて光の体験をするんですが、何か冷たいものがすぅーっと降ってきて
A-えっ、やっぱ冷たいものがくるんですか?
K-ええ。とても心地よい冷たさです。
A-同じだ、同じだ!そのあと目の前が真っ白になりませんでした?
K-ええ、最初黄金色の光が近づいて来るんです。おそらく自分のチャクラが上に向かって開いていくので、自分の方が光に向かって上昇していっているのでしょう。
そしてまばゆいばかりの白色から白銀、最後には透明光へと変わっていきます。
A-LSDのようにいろんなヴィジョンが見えてるうちはまだ低い段階なんですよ。ヘロインは完全な光に包まれますからね。
ヴェルヴェットアンダーグラウンドってバンドに<ホワイトライト ホワイトヒート>というアルバムがありますが、注射針から静脈を伝って、首筋を冷たいものが昇っていく。そしてシャーっと光の中を突き抜けていき、海に浮かぶんです。でも加納さんが使った脳内麻薬の方が上かも知れない。だって白色光から透明な光になってゆくんですから。
K-頭から意識が突き出ちゃうかと思いましたよ。
それは柔らかくて、消耗しないんです。ますます充実していくというか、呼吸が止まるほどのものすごい快感でしたよ。
A-あの温泉じゃなくて、何だっけ?温熱修行は(笑い)どうでした?
K-死にかけましたよ。
あれはもともとLSDのあと、その成分を発汗作用によって体外に出すためのものなんです。
47度の湯に肩まで15分間つかり、それを3回やるんです。しかもその間に57度のお湯を1、5リットル飲まされるんです。実際に何人か死んでますし。
A-サリンの自作自演の人体実験にされたんですって?
K-サリンかどうかはわかりませんが、毒ガスです。
ある日突然、部屋の中のゴキブリやネズミが全滅したんです。
朝目覚めると体がまったく動かなくなって、呼吸は止まり、喘息で血を吐き、臨死体験までしました。
A-ひどいな。オウム得意の自作自演ですか。
K-当時内部では「アメリカ軍が毒ガスをまいている」って吹き込まれてましたが、はっきりとわかったのは逮捕されたあとです。
A-何で逮捕されたんですか?
K-上司の命令を断り切れなくって、虚偽記載で住民票を取得しました。有印私文書偽造で今も3年間の執行猶予期間中です。
取り調べのとき警察の人が教えてくれました。教団自身が信者を使って人体実験していたこと。そして我々の症状が神経ガスを吸ったときのものだと。その後遺症で少し皮膚をかいただけでもプクーっと腫れ、異常な肥満に悩まされました。
A-よく健康な体に戻りましたね。
K-今度「究極のダイエット」と言う本を出版しますが、ヨガをベースとした代謝作用のダイエットです。まあ、あのときの体験、毒ガスのおかげです。(笑い)
A-逆にオウムを利用してますね。
オレも麻原には迷惑を受けました。スカトロアート展のために宇都宮の山奥にあるサティアンみたいな工場の廃虚に泊まり込んで制作していたときです。6mX6mのキャンヴァスに自分の血液で絵を描いていたのですが、近くの住民が通 報したんです。「麻原らしき男を見た」と。警察がきてみると、ヒゲ面の男が出てきて血だらけの注射器やらティッシュが床に散らばっているし、まさに<血のイニシエーション>でした。(笑い)
オレはサリン事件の1年くらい前に書いた<子宮外妊娠>という小説の中に、サリンやオウムや神戸地震を予言した文章があるし、<月刊DES>っていう人類滅亡専門誌も出してたし、インドやチベット、麻薬やメロンまで・・・いやになるほど似てるんですが、加納さんはさすがに顔も見たくないでしょう?
K-最初から麻原には距離を置いていたし、強制捜査の前から教団には見切りをつけてました。
現在は変な人としては面白いけど、教祖としてはもう興味ありませんね。
A-オレは逆に恐いんです。
この間も裁判でショーコーマーチをくちずさんだり、いきなりへたな英語で演説しだしちゃったじゃないですか。
オレは心の中で必死に祈ってました。
「頼むから、これ以上面白いギャグをやらないでくれ!じゃないと・・・好きになってしまいそうだから」って(笑い)
K-あまりにもバカらしくて新聞にも載せられなかった裏話ですが、サリン事件を「実行犯は井上、主犯は中沢新一だ」とか言ったらしいです。(笑い)
A-オレは基本的に吉本隆明さんと同じく麻原を天才的なヨガ行者として認めています。
ただ決定的なちがいは、吉本さんは世間や知識人のくだらない対応を拒絶しているところです。
オレはオウムの事件は現代日本の社会、世界の反応までふくめたひとつの作品だと思っています。お茶の間の主婦の「ニラレバ大師」ってギャグまでが、この作品を完結させる共同制作に必要不可欠なディティールなんです。
宇宙の意志を運ぶためにこの世に生を授かった我々というか、人間からセブンイレブンのビニール袋まで<ディティールを運ぶ>かけがいのない<命>なのですが、そういう<顕微鏡的な視点>と同時に惑星から見た<望遠鏡的な視点>もあっていいんじゃないかな。
たとえば世界一火山や地震が多いこの島国では踊狂現象っていう伝統があるんです。火山の爆発や地震の前後に人々が仕事や、家族や、道徳をおっぽりだして踊り狂っちゃうんです。記録に残されてるものでは644年の<常世の神>事件から始まって、なぜか必ず60年おきに必ず起こってるんです。
オレも詳しい年代は忘れちゃったけど(詳しくはフリークアウト15を見て下さい)身体的な踊狂現象の最後は1867年の<ええじゃないか>なんですけど、その60年後に太平洋戦争が起こってますよね。今、加納さんと話していてゾゾっとしました。95年の地下鉄サリンは太平洋戦争の60年後じゃないですか、しかも阪神大震災といっしょに・・・
もしかすると麻原をはじめ、我々や世界を踊らせたのは、地球っていう女の子の生理だったのかもしれませんね。これって宇宙の安定に欠かせないもんなんすよ。神が悪魔と、コンピューターがウィルスと共存するのは、生き残るための重要な自己保存装置、末端の<ゆらぎ>だったのかもしれません。
K-そうですね。もちろんあの事件を肯定するわけではありませんが、快感と苦痛も、聖と俗、創造と破壊、善と悪、みんなセットで、どちらかだけにかたよると身動き出来なくなって破局を迎えます。
A-<想念が形を作る>って話をロフトプラスワンでしたとき、ちょっとひんしゅくを買ったんです。
たとえば朝の通勤地下鉄は満員、痴漢に会ったりして、「こんな電車、こんな人たち、こんな社会、みんななくなっちゃえばいいんだ!」って、我々の集団無意識のさまざまな絵の具が、オウムという筆を使って、現代日本というキャンヴァスの上に描きあげられたのがこの作品です。つまり「本当の犯人はあなたなんですよ」って(笑い)
K-ボクも子供の頃、よく人の頭がつぶれた絵なんかを描いていました。人間は水の入った風船のようにもろい存在です。皮1枚やぶるだけで、汚い臓物や、悪意が飛び散ります。しかしそれを見据えていかないと、本当の強さや優しさは生まれないと思います。
あのーさっき見せてもらった自分の食べたものと出したウンコの写真を並べた作品。あれ、釈迦の修行法の中にもありますよ。
A-ほ、ほんとですか?
K-ええ、観想法のひとつで食べ物と排泄物を同時にイメージして、それを融合させていく方法です。その他にも釈迦は動物を救うためには動物の気持ちになるといって、四つ足で歩きながらそこら中に糞をして、それを食べるんです。
A-さすがにいっちゃってますね。
A-もっとエグイのは弟子が恋に溺れて、恋人が死んだあとも想い煩っていたんです。すると釈迦はその死体を掘り出し、弟子に無理矢理腐った死体とセックスさせたそうです。
A-釈迦が生きてたら犯罪者ですね。やっぱり裁判で「シャカーシャカーシャーカー」って歌い出すんですかね。(笑い)
K-「ショーコーマーチ」のヴォーカルがボクだったんです。
A-そ、そんな、あの大ヒット曲のヴォーカルが今、目の前にいるなんて!(笑い)
K-90年の衆議院選挙前にオーディションがありました。麻原がでーんと構える前で200人くらいの信者が次々と「ショーコーマーチ」を歌っていくんです。
出家直後の青山弁護士もアニメ系の声で、うまいんです。村井なんかも声量 があっていい声してました。もっと声楽やっていた人とかいたんですけど、教祖の一言で1位 に選ばれました。
「おまえが歌うと、おばさんが集まる」って。(笑い)
A-このA倉庫って杉並区ですけど、このへんですよね?
K-ええ、商店街おぼえてますよ。このへんでも選挙カーに乗ってよく歌いました。変なゾウの帽子かぶって、清水シスタースや都沢が横で踊って。(笑い)
A-音楽は昔からやられてたんですか?
K-小学校から高校の途中でヨガを始めるまでブラスバンドでトロンボーンを吹いてました。
A-詩も書いてました?
K-いいえ。あれはオームを脱会してから、精神的な危機感があったころです。いきなり詩があふれてきて、書き留めるのに必死って感じでしたね。
A-その感覚よくわかりますよ。自我とか自分の才能なんかを信じてるうちは、いい作品は出来ませんよね。
ギリギリに追いつめられた孤独が発狂や自殺から自分を救うために、創作という最後に残された武器を使って反撃に転じるんです。まあ、そう大げさに言わないでも、鼻くそでもほじってボケーとしてればいいんです、チャンネルを開きっぱなしにして。
やっぱりオウムやめたあと、迷っていたんですか?
K-まず最初に思ったのは、これで唄が歌えるって。
A-ゾウの帽子をかぶらないでもって?(笑い)
それにしても姫処凛をバックに歌ったライヴはすごかったですよ。宅八郎さんもかすんでました。
K-あんまり直接的な反応がなかったんで、わからなかったんですよ。そしたらAKIRAさんがすごい感動してたって話を聞いて、うれしかったですね。
A-だってあんな仏典のような歌詞、ポップミュージックの歴史ではひとつもありませんよ。しかもそれがまったく正反対なポップで美しいメロディーに違和感なく乗って歌われるなんて!
もうこれをCDとして残しておかなかったら、我々は取り返しのつかない文化遺産を失うって感じっすよ。
K-また、大げさな。
A-それでプロデュースを申しこんだんです。
今、クレイジーSKBの主宰する殺害塩化ビニールから佐川一政さんのCDを制作中で、加納さんのは来年のあたまあたりにリリースの予定です。
最後にミュージシャン加納秀一の抱負をお願いします。
K-そんなあらたまっても困るんですが、今まで自分の肉体を通して経験してきたものを詩や音楽を使って表現していきたいと思います。
A-やっぱ基本は、<人体実験>と<自作自演>ですね。(笑い)

真実
何かになることで 得られるものなど
なにもなかった

空虚さとさみしさがおそいかかるのに
たえきれず
自分がわからないまま
外に手をのばし求め続けた

競い合って得られる つかのまの栄光と満足
やがて おとずれる落胆と挫折
紙切れのような美しさが
不安定な心の傷を広げる
責めるべきは外にあるのだろうか

真実をみようとしない者たちは
目をそらして暗闇を歩む

はるか遠い昔から
繰り返される歴史のはざまで
僕に何ができるだろう
僕は何をすればいいのだろう

AKIRA's INFORMATION GO GO GO!
ナムジュンパイクのルームメイトだったフルクサスの折元立身さんの手伝いでドイツへ行って来る。フランス、チュニジアから帰ってきたばかりなのでつらいが、ドクメンタで何かやらかそうと計画している。

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