今、世界で一ちゃん面白いのは岡画郎だ!

前列左から水口孝一、オレ、岡啓輔、小川てつオ、ウサギ

皆の衆、画廊の廊が写植ミスだとお思いじゃろうが、これには深〜い深〜いわけがありますのじゃ。今は昔(1年前だけど)舞踏家でもある岡啓輔どんは自分のアパートの窓が大きくて、大通 りに面していることに悩んでおった。
「昼寝しとる間にも日焼けしてしまうし、うるそうて眠れんわい。何かよい知恵はないもんかのう?」
そこにおったのが巨匠小川てつオどんと書生水口孝一どんじゃ
「そうじゃ、この窓を画廊にしてもうたらどうかいのう?」
「しかし、わしら目もよく見えんからのう」
「そうじゃ、双眼鏡を使ったらどうじゃ」
こうしてめでたく2階の窓を道の向こうから双眼鏡でのぞく岡画廊が高円寺に誕生したのじゃった。がが、しかしなれど・・・
「控え、控えーい!それがしら、謀反を企む不届き者。この屋敷は住居であって、画廊など経営するとはもってのほか、今すぐ奉行所へ引っ立ててやる〜」
大家主の怒りももっともじゃが、この画廊ビタ一文とてとっちゃいねぇ。
「岡どん、あっしらに、いい知恵がござる」
知恵袋の小川どんがさっと看板をひっつかむと、水口どんが白ペンキである部分を塗りつぶす。
なんと岡画廊という店の名が岡画郎という個人名に早変わり〜
「いくら大家主とて、これでは文句も言えまい!」
「むむ、むむむむ、かきさまら一休さんか?」
「わしらのような金も名もない人間が世間様と渡り合うには、野性の知恵だけがたよりじゃて。知恵さえ使えば不可能はない、それが出来んのは知恵じゃなく知識を使っておるからじゃ」
この口調だと、どうもスローペースになっていかん。まず、この一年間岡画郎で行われた展覧会を早送りで紹介しよう。
1995年4月の開朗記念展は「ザ・窓際族」岡啓輔(以下敬称略)、小川てつオ、水口孝一の3人が交代で窓に置かれたデスクに座り続ける。よれよれの背広姿でボーっと道行く人を眺めながら、時にはよだれを垂らし眠りこけ、ただひたすらに居続けるのだ。客は道の向こう側に設置された100円ショップの双眼鏡で「あぁ今日も居るのだなぁ」とのぞく。
5月は「ピス メーカー」ピースメーカー平和の「使」者ならぬション「便」者、児島兄妹のおねしょ布団がベランダに干してある。道の向こう側からも見える濃い黄色を出すために、スタミナドリンクとビタミン剤を大量 摂取し、水を断ったと言う力作である。
6月は「恋愛を機械とした居住計画」丸井隆人はヴェラスケスの名画ラスメニーナスのシルエットヴァージョン(人物大)をつくり、客は双眼鏡でカーテンの影をのぞく。
7月は「文通希望」木村美江(女)20才 S49・12・3生 射手座 血液型不明 好きな食べ物 茶碗蒸し 趣味 ボーっとする 身長 157cm 体重 ひみつ、そして今日あった出来事などを窓いっぱいに書く。それを双眼鏡で読んだ客は備え付けられたノートに返事を書く。するとその返事を・・・このように切手のいらない文通 は続く。
8月は「虫の付く夏」窓の中には等身大の牧瀬里穂ポスター。窓の外にはロマンチックに青い誘蛾灯が、集まってきた虫どもを容赦なく焼き焦がす。
9月は「X・O・M・E」ゾームと読む同名のノイズバンドを主宰する佐藤えり子とボブは円盤おたくだ。窓辺に設置されたオリジナル受信機で宇宙人からのメッセージを音に還元し、UFOを呼ぼうという展覧会である。(定例会に参加したオレはほんのちょびっとだが、UFOを目撃したぞ!)
10月は「テレクラWINDOW展」これは日替わりで展示が変わる、岡画郎最大の展覧会である。27人もの作品の中からいくつかを紹介しよう。そのユニークな発想で注目される新人池澤雪子の「視力測定」は、2mにも拡大された国際標準視力測定表が窓に貼り出され、道の向こう側に設置された双眼鏡ならぬ 、望遠鏡でのぞく。なぜなら視力測定は片目づつ行わなければならないからダハハ!女医の服装をした池澤はアンテナペンで例の「C」マークを指してゆき、客は20mも離れた窓の女医に必死に向きを伝える。終わったら池澤眼科こと岡画郎に電話して測定結果 を聞く。オレ道で通行人を見てたけど、望遠鏡をのぞきながら手旗信号のような怪しい動きをさせられてる客に驚き、その人が眺めてる反対側アパートの窓を見ると、白衣を着た女の子が巨大な視力測定表を真顔で指してる風景に唖然としてたぜ。池澤は他にも面 白い作品をたくさん作っているので、機会を見つけて紹介しよう。
文通展で好評を博した木村みえは「出前そば屋」。窓に貼ってあるカップ麺などのメニューを客が双眼鏡でのぞいて電話注文する。かっぽう着姿の木村が「へい、おまちー!」と道の向こう側で待ってる客に出前するが、けっきょく出前先は路上なので、しかたなく客はそこで食べる。
翌月に結婚を控えた小川明子は「花嫁修業」と題してひたすら窓拭きをしていた。
アートレスラーオクダサトシは「大貧民バトルロイヤル」覆面レスラーのカッコをした5人の屈強な男たちが窓辺に座り込み、トランプで一喜一憂する。客から電話がかかってくると「いつでもやってやろうじゃねぇか!」と激をとばすが、また丸くなって手持ちのカードをながめる。
斉藤君は「犬の生活」電話が来ると口で受話器を外しうなり声を聞かせ、客が入ってくると吠え、お尻の匂いを嗅ぐ。
秦泉寺毅は「ダイエット」ちょっと太めの会社員だが、体重計を横に腕立て伏せ、スクワット、エアロビクス、鉄アレイ、絶食など一日で約900グラムの減量 に成功した。
サルヴァニラの菊池七変化はその舞踏で最も多くの通行人を集めたが、盛り上がりすぎて二階のベランダから転落。一階の屋根があったので一命は取り留めたが、おでこを擦りむいた。
本物の僧侶でもあり舞踏家でもある十亀修之介は窓辺で経を唱え続け、電話もお経で答える。
漫才家住所氏名の池田繁は巨大な字で「なにが?」と書いて、その前に座り続けた。
美術モデル沢本由紀は客に双眼鏡でのぞきスケッチをさせ、ぶーけに連載中の「漫画家」柏屋コッコは締め切りに追われてるため、窓辺で漫画を描きまくり、ミュージシャンの小林君は電話の相手に歌詞を言ってもらい、ギターやシンセを使ってその場で「ラブソング」を作り、「月刊ブラシ」の編集長村上清は電話口で「ハミングイントロ当てクイズ」をやり、女子大生日高文は「私を起こして下さい」と窓に貼りひたすら昼寝を続け、「ダメ連」はベランダから変態革命演説をし、母ほこさんは電話の客を岡画郎に上げて、1才のつちちゃんをあやしてもらう「共同保育」を行った。
とまあ、ヴァラエティーに富んだ、なんてゆう言葉では生やさしすぎる内容だわさ。ねんのため言っておくけど、これらの作品はあくまで美術であってパフォーマンスではない。岡画郎が画廊にこだわるのもここだ。
11月は休朗の予定だった。しかしさすがは一休、休みは休みなのだが、やつらはそれをなんと「常設展」と呼んだ。つまりは、画郎を始める前のフツーのアパート。たまに岡ちゃんが洗濯干したり、朝起きて窓辺であくびしたり、ほとんど引っ込んだきり何もやらない。しかしこの言葉遊びが重要なのだ。ただの「休み」を「常設展」と呼ぶことによって「フツーの生活」さえもが「アート」にひっくりかえる。ここにはもう、あの「前衛」やら「過激」さのイヤなニオイがない。にもかかわらず最も先鋭的なメッセージが隠されているんだわなぁ。もしかすると次世代のアートへの鍵が、この「常設展」にあるのかも知れない。
12月は「ハチ公増殖計画」東京ガガガを主宰する路上の帝王、園子温らしい作品だ。渋谷のハチ公そっくりに作られたレプリカをベランダに設置。渋谷なんか行かず、高円寺のハチ公前で待ち合わせだー!とたくさんのハチ公ファン?がつめかけた。企画の定例会で彼は、これを「ハチ公、愛の旅路」と名づけ、渋谷ハチ公のとなりに台だけを設置し、その中でひと月生活すると真剣に考えてた。実現はできなかったものの、渋谷北口交差点をガガガを率いて執拗に止め続けるヤツの愛情は本物だ。
96年1月は「わらしべ長者」斉藤君は生粋の貧乏。藁一本から経済の原点である物々交換を始め、果 たして彼が長者番付けに載るか!という期待に胸をときめかしつつ、会期終了時には、「なんでもハンガー百本分」の獲得に到った。一瞬勝利の喜びに沸いたが、ハンガーに掛ける物がないことに気づいた斉藤君は会期終了後も「わらしべ長者」を続けることを決意した。
2月は「受験」いきなり送られてきた受験番号のはがきを持って、各自自分の合否を確かめに双眼鏡をのぞく。合格者はわけもわからず胴上げされて、毎週土曜日3時間の授業を受ける。授業はいたって真面 目なもので、「近代建築以降」「紋白蝶の一生」「現代詩とポップミュージック」「寿司の握り方」「初歩からの妖怪」「現国ベル薔薇」など様々である。もちろん授業の後にはテストが用意され、採点を受ける。
とまあ、岡画郎1年の長い歴史を振り返ってきたが、こんな面白い画廊、世界中探したってどこにもないぜ。たしかに自主経営の画廊は世界中にたくさんあるだろうが、岡画郎のすごさはその一貫したコンセプトだ。一見ハチャメチャに見える作品群のチョイスには周到な計算が行き届いている。
デュシャンの便器にはじまり、ウォーホールのキャンベルスープに継承された「日常」の概念を極限にまで押し広げていこうとする果 敢な試みである。「そんなもの60年代でとっくに終わってますよ」なんて言うじじいには、ほざかしておけ。芸術=宗教の歴史にフルチンの肉体を持ち込んだギリシャ文明やルネッサンスのミケランジェロから、ミレーが「どん百姓」の絵を「おフランス」の貴族サロンに持ち込んでスキャンダルを巻き起こしたベルエポックをすぎて「お芸術」と「ど日常」の国境争いは永遠に続くものだ。

AKIRA’s Information go go!
4月は岡画郎1周年記念特別企画「AKIRAの高円寺新名所めぐり」ときたもんだ!
春の高円寺をなわとび電車に乗って、あやしい新名所巡り。(お花見付き)
4月の土日6、7、13、14、20、21、27、28の8日間 午後3時〜6時
定員が各10名までなので早めに電話予約してください。無料ですが、持ち込み、差し入れ大歓迎。
ちなみに「観光旅行」なので、なるべく「ヨソイキ」な服装が望ましいです。

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