日本聖地めぐり
九州篇


ドッドド ドドウド ドドウド ドドウ。
雲隠れした富士山をよこに見ながらオレたちは西へむかった。とちゅう岡崎をはじめいくつかの花火大会を通 りすぎたんだけど、日本人がこんなに花火が好きなのは、やっぱ火山列島に住む火の民族の記憶なんじやないかな。
三重県亀山にある岡田屋さんという酒屋(月の庭)は、放浪者たちの名物駅、もしくはシェルターつて感じだ。若旦那のマサルさんと奥さんのカオリさんは、ヨーロッパや日本のセクレット・ランにも参加していて、岡田屋さんをたまり場にさまざまなコミニュケーションが広がっている。へとへとになってたどり着いたオレたちを「るみ子の酒」という極上の純米吟醸酒でもてなしてくれた。
翌日はオレのスペイン時代からの親友アパッチひろP(「ヒロシマナイトフィーヴァー」にも参加している)といっしょに、ヤマトタケルの奥さんオトタチバナ姫が祭られている忍山神社とヤマトタケルの墓があるノボノ神社にいった。
墓のまえには2メートルほどの柵があったので、乗り越えるときに裾を引っかけ、逆さまにぶら下がってしまった。(やはりヤマトタケルの呪いなのかっ!)このスーパースターも残虐な征服者なんだろうが、強いやつにはいちおう敬意を表してやろう。
ここにある「連理の榊」ってのが奇妙な形をしている。2本別々の枝が空中で1本につながっている。よっぽど仲のいい夫婦だったんだな。
昼過ぎに三重を出て、鳥取県湯村温泉で豪華ホテルの風呂にただでいれてもらった。旅先の人情ほどうれしいもんはない。そのまま鳥取砂丘にテントをはって、波の音を枕に眠るはずが、壮絶な蚊との戦いだった。
ドッドド ドドウド ドドウド ドドウ。
日本神話最大の反逆者スサノオがヤマタノオロチを 退治した荒神谷を通り、出雲大社に着いた。ここは オオクニヌシが祭られている神社でもあり、祭られているということは、逆に幽閉されているているということでもある。スサノオ直系の孫であり、平和に国を治めたオオクニヌシ(おそらく縄文系)は武力の神タケミカズチ(おそらく大陸から来た弥生系)によって強引に「国譲り」させられてしまう。今では大黒様として笑顔をふりまいてるおっちやんも、いつかあのこぎれいな出雲大社をひっくり返して暴れ出すかもしれない。
被爆51年目の広島にはいり、「バカ書道家」山本さん宅に滞在し、原爆ドーム前で「ピロシマ」展と、「最新鋭先頭芸術派出所」ギャラリーで「パン食い競争」という展覧会をやった。 展示の制作が終わった時点で、もう九州の旅へと出発した。
ドッドド ドドウド ドドウド ドドウ。
東洋一の鍾乳洞秋吉台の先にある景清洞へはいる。観光コースが終わり、さらにその奥までライターの明かりではいっていく。完全なる暗闇の世界、時折しずくの垂れる音以外無音である。おそらく死後の世界は光に包まれているだろうけど、再び生き物として懐妊されるとき、オレたちはこの心地よい闇にもどって来るんじゃないかな。きっと戦乱を落ち延びた平景清も、こうして胎児のように、洞窟を愛したんだと思う。
下関から門司へ九州上陸!
小倉から山田へ南下して原鶴温泉にテントを張った。
湯布院、水分峠からやまなみハイウェイをとおって阿蘇神社に到着した。火の国熊本にある神社の総本山だ。 男神アソツヒコと女神アソツヒメと擬人化されるまえは、火山そのものが神だった。   阿蘇を登ってゆくとギザギザな山が見える。このネコ岳を卑弥呼が神事を司った山だという説があるが、「邪馬台国はどこにあったのか?」なんてことにぜんぜん興味のないオレも、ヴィジュアル的に惹きつけられる山だ。
ついに火口にたどり着く。まるで宇宙基地を思わせるような丸いコンクリートシェルターが点在するなかを、煮えたぎる火口ヘと近づいていく。荒々しく削り取られた崖、沸騰する緑色の沼、大空に 吹き上げる蒸気、それはまぎれもなく大地のホト(女陰)、地中のマグマヘと直結するヴァギナの入口だった。恐ろしさと同時に、不思議な懐かしさが体を突き抜けてゆく。「オレはここから生まれた」なんの理由もなく、そう確信した。長い間探していた場所に、やっと出会えたのだ!
なあんて感動してると、トラックに乗ったおっさんが「ゲートか閉まります。時間だから帰ってください」と催促しに来た。せっかく今日は火口をながめながら野宿しよぅと、地酒まで買ってきたのに。追い立てられるようにゲートを出され阿蘇を下った。
白水村にある瑠璃温泉にはいって草むらで野宿した。
翌日食事をしようと入った古今亭のオーナー飛瀬さんから、とんでもないものを見せていただいた。それは八坂神社で宮司をしている田尻さんの、歴史をひっくり返すような大発見である。
なんと、3〜4世紀までに建てられた神社たちを線で結ぷと、阿蘇山を中心に熊本全土にわたる巨大な幾何学図形ができあがるんだ! しかも図形はフィボナッチ数列という黄金比によつて、メートル法でできている。
これだけじゃなんのことかわからないかも知れないけど、実際地図の上に引かれた図形を見せられたときにはぶっ飛んだね。熊本全土を俯瞰できるなんて、 ナスカの地上絵よっかすげえぜ。昔から神社を修復するときは、どんな細かいディティールも勝手に変えちゃいけないって言われてるけど、こんな恐ろしい技術を持った連中が作ったんだ。
京都造形芸術大学の渡辺豊和教権は、奈良にある大和三山と三輪山の配置にはピタゴラスの定理が用いられていて、山を移動させた痕跡すらあることを発見したけど、いったい人類って本当に進歩してんのかなあ。少なくとも近代科学の神話はもう崩壊しはじめている。
ふつう神社は高いところにあるが、階段を下っていくという珍しい吉見神社で変わったイチョウの葉をひろい、水俣病で有名なのチッソ工場で印を結び、鹿児島方面 へむかった。
もうおそくなって温泉もあきらめていたころ、栗野というところで「こすもす湯」と言う看板を見つける。温泉からあがってそこのおっさんと話していると、「今から鹿児島 は遠いから、ここに泊まっていきんしやい」とのやさしい言葉。「おおっ生き神様じやあ!」合掌しながら、初めて屋根の下で眠った。
ノンの母方の故郷である隼人にさしかかったとき、ダブル レインボーが空から歓迎してくれた。ふと見つけたヒルコ神社に立ち寄る。ヒルコはオレの好きな神様で、イザナギの娘なのに、3歳になっても足が立たないと言う理由で島流しにされる。ここにはその時の船アマノイワクスから生えた楠の老木があり、この付近をナゲキの杜と言う。古びた杜の片隅にあった、蛇の抜け殻が印象的だった。
鹿児島市からフェリーに乗って桜島に着くなり、どしや降りの雨にみまわれ、噴火用のシェルターで雨宿りした。溶岩が固まってできた岩原はどこか別 の惑星を思わせる。去年の夏の噴火で灰に埋まっても、また人は住みつづける。さすが火の民族だ。
いよいよ旅も大づめ、宮崎県日向をとおって、高千穂へと到着した。
「古事記」「日本書紀」という文部省認定の日本神話は、征服者が自分に都合のいいようにねじ曲げたもんだけど、それでもこの部分はおもしろいぜ。 なぜかっていうと、これは神様劇を演じる芸能集団猿女〔さるめ)の劇から「古事記」が盗作しちゃったとこなんだそうだ。(だからオルフェウス冥界下り とそっくりなのかな)
まず、イザナギ(旦那)とイザナミ(奥さん)がエッチして国を生む。しかし最後に生んだカクズチってのが雷坊主で、お母さんはオマンコを火傷して死んじゃうんだ。お父さんは逆上して雷坊主を切り殺し、 死んだ奥さんを連れもどしにあの世に迎えにいく。奥さんは「生者の国に帰るまでは絶対にあたしを見ちゃいや〜ん」と旦那に約束させる。しか し旦那は「おれ、もう、我慢できな〜い」ってふりむいてしまうんだ。すると奥さんはゾンビ状態。「見、見たわね−!」って追いかけてくるのを後ろ手(見返り美人をはじめ、後ろ向きにおこなった行為は呪いとなる)に持った剣で払いながら逃げる。やっとのことで出口に大岩でふたをして助かる(臭いものにはふたをしろという、 人間のエゴの原型かも)。
日向の海岸で汚れを落としてるときに、目から生まれたのがアマテラス、鼻から生まれたのがスサノオだった(ヒルコもそん時生まれた)。
しかし息の荒いスサノオはしょうもない悪ガキで、皮を剥いだ馬(ずるむけチンポの象徴か?)をアパレル工場 に投げこむんだ。怒った姉さんアマテラスは 天の岩戸にひきこもっちまった。
太陽の女神がいなくなったら世の中真っ暗。ニューヨークの大停電じゃないが、悪いヤツらが、ショーウィンドウ割ってTV
を盗んだり、病院からモルフィネ盗んだり、やり放題。
困った神様たちは天の安河原に集まつて、緊急サミットを開いた。議長はもちろんオモイカネ(高円寺の氷川神社にいたヤツだ)。
「アマテラちゃんをおびきだすには、これしかない。Let's have a party!」

そこで踊ったのは天才ストリッパー、アメノウズメ。コミカルダンスのフィナーレは大股開きで御開帳−!
「なんか、楽しそうね」思わずアマテラスが顔をのぞかしたところを、マッチョマンのタジカラオがこじ開ける。(強姦の象徴か?!)これでめでたく世の中に光がもどりましたとさ。
アマテラスを祭る東本宮は川の向こう側にあって、静かなたたずまいを見せてる。とちゅうで店先のおばあちゃんからアイスを買ったが、店のおやじが「お金を払ったか?」などと追いかけてきた。あのおばあちゃんはきっと天の岩戸に隠れちまったらしい。
「天の岩戸をご覧になりたい方はお申し付け下さい」なんて書いてあるので、一万円くらい寄付金を取られるのかと思っていると、決してそんなことはない。美声の宮司さんが快く案内してくれたので、思わずお守りを買った。
サミット会場の天の安河原は巨大な岩の窪みにあって、積みあげられている小石が願いの都市を作っている。
そこからバイクでひとっ走りすると、神の孫たちが降り立ったという高天原だ。黒い蛇がにゅっと現れ、歓迎してくれた。蛇神様は龍の神、新門司からフェリーに乗るオレたちを台風12号で見送ってくれた。


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