アルカディアでのライヴ

9月に八王子のアルカディアでおこなわれた詩の朗読会に出演した。
オレは強行スケジュールの中、ミトコンドリアショーの女性ダンサー二人を引き連れ、フラメンコ+演歌『フラ演歌』を歌った。
誘ってくれたのは梅田智江さんだ。
智江さんとはカーサ石神井で、マサのお母さんから紹介された。そのときもらった詩集は生々しい性の根源にまで碇を降ろした散文詩集だった。昔彼女が主催した詩誌にはオレの大好きな金子光晴も参加していて、梅田智江は金子光晴のスピリットを受け継ぐ本物の詩人だった。
もうひとり強烈な印象に残ったのは、瀬沼孝彰さんだ。
瀬沼さんはヨレヨレの背広姿でボソボソと自作の詩を朗読した。うだつの上がらないサラリーマンといった風情の口から、ジョニー・サンダースの名前が出てきた。ジョニー・サンダースはニューヨーク・パンクの創始者だ。朗読が終わったあと、ニューヨークパンクシーンの話を瀬沼さんとした。普段はとても無口で初対面 の人とは話すのが苦手という瀬沼さんは、内に熱い情熱をこめてぼくとつに語る。
リチャード・ヘルやトム・ヴァーレンのテレヴィジョンやパティー・スミスの「ホーゼス」のほうがピストルズなんかより早いとか、ニューヨークアンダーグラウンドのカリスマはルー・リードじゃなくリディア・ランチだ。なんて話でオレたちは盛り上がった。
瀬沼さんのキラキラ輝く小さな目が、2年後、交通事故により悲惨な死を迎えるなんて夢にも思わなかった。雨の日に自転車に乗りながら傘をさしていた瀬沼さんは、フロントに太いパイプのついた4WFにはじき飛ばされ、遠い天まで舞い上がった。
瀬沼さんの遺稿詩集から一編を書き抜いてみよう。

ホタル

どこから手をつけていいのかわからなかった
整理しなければならないものが
たくさんあるような気がするのに
すっかり自信がなくなって
しゃがみこんでしまった

時代の空気はどんどん荒く 息苦しくなっていく
情報ネットワークは際限なく拡大していくのに
心は追いつめられるように
狭くなってしまう

一人の少年の顔が浮かんできた
天然パーマの髪に小さな目
石井君だった
あんなに気が合ったのに
中学校を卒業してから
会うことができなくなってしまった
好きで強くひきつけられながらも
二度と会うことができなくなってしまう人やものが
たくさんあるのかもしれない

(大切なことは
(寒いときにどう歩くかではないでしょうか

新聞のインタビュー 記事で読んだ人の言葉が
聞こえてくるような気がした
その人は多分 たくさんの思いの惨殺と
吃音する声を抱きながら
そう言わざるをえなかったのだろう

(大切なことは
(寒いときにどう歩くかではないでしょうかと

暗闇に青白い光が見えた
蛍だった
こんなところに蛍などいるはずがないのに
たしかに蛍だった
蛍は今にも消いりそうに
ヨロヨロと飛んでいく

その光の後を追って
歩いていこうと思った

瀬沼孝彰詩集「凍えた耳」より

もう一冊の詩集「夢の家」もふくめて池袋西武デパートのルピリエに問い合わせれば、まだ手に入るのかもしれない。

HOME