世にも不思議な展覧会

今までいろんな個展をやってきたが、こんな不思議な現象ははじめてだ。
原爆50周年の広島で制作した作品を東京で展示することになった。8月6日の原爆投下日、エノラゲイが標的とした相生橋のうえで、通 行人にダイイング(被害者たちを模して地面に横たわる儀式)してもらった作品だ。設計図などを転写 する青焼き紙に写し取った等身大の青い影で壁を埋めつくすと、ギャラリーが静謐な雰囲気になる。
今回は広島出身の女性アーティスト高村まどかにコラボレートしてもらうことになった。コンクリートの床にチョークで爆心地の円を描き、電球の熱で回転する走馬灯(毎年原爆投下日にドーム前の太田川でおこなわれる灯籠流しがモチーフだ)を太田川の流れにそって配置した。つまり広島の俯瞰図を床に再現したのだ。走馬灯には原子爆弾や原発に関するマークや化学式などが影で浮かび上がり、夜には無気味な美しさをかもし出す。
搬入も終わり、展覧会がはじまった初日から不吉なできごとが相次いだ。
ギャラリーのスタッフが5万円の駐車禁止をくらい、もうひとりがギャラリーの鍵と財布をなくした。搬入を手伝ってくれた友人が交通 事故(幸いケガはなかったが)にあう。高村まどかの灯籠がいくつか回らなくなり、オレの作品のうち二枚が30cmほど破かれていた。ギャラリーにはスタッフが常時ふたり以上いるし、客が破ることなど考えられない。それに作品の最上部に手をのばすには踏み台がないと無理だ。 霊感の強い三田村みどりがいるはずのない影を目撃している。 彼女いわく、「広島の霊を呼び寄せちゃったみたい」という。
オレは霊魂とかお化けに対して、ひととまったく正反対の考えをもっている。世界中の先住民から学んだことは、「お化けや妖怪は人間の先生だ」ということだ。たとえば森の木を切らせないために妖怪が人間をおどかす。それは妖怪が自分の住処を守るためというより、森がなくなると旱魃や 塩害で人間も死滅してしまうからだ。祖先の霊や死んだ家族や友人はオレたちを守ってくれるとアイヌやインディアンは信じている。
オレは爆心地のまん中に塩をもり、イタズラ好きな亡霊たちに話しかけた。「オレの展覧会に来てくれて( しかも時空まで越えて)ありがとうございます。この作品はオレっていう生身の肉体を使ってあなたたちが作ったようなもんです。だから力を貸してください。この作品を作るときにくれたポジティヴな力を。オレはあなたたちを忌み嫌ったり、追い返したりしませんから、ゆっくり楽しんでいってください」
その日からなくした財布が見つかるは、テレビの取材がはいるわ、観客がどっと増えるわで、展覧会は成功をおさめた。
最終日は、北海道から広島までセイクレットラン(平和を願うマラソン)をおこなったインディアンの儀式で霊を送ってもらった。
霊感なんか全然ないオレでも、こういうことってあるんだと思う。「本当に霊魂は存在するのか?」なんていう不毛な論争じゃない。すべてを偶然と片付けるより、すべてに「意味」があることを信じつづけたいんだ。